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Excelの勤怠管理が限界になるサイン7つと、乗り換えの手順

乗り換え

Excel の勤怠管理は、始めるコストがゼロに近く、小さな事業ではよくできた選択肢です。問題は、どこかで確実に限界が来るのに、その線引きが見えにくいことです。

「まだ何とかなっている」と思いながら、毎月末に数時間を溶かしている——という状態は珍しくありません。この記事では、やめどきを判断するサインと、移行の実際の手順を整理します。

限界のサイン7つ

当てはまる数が多いほど、すでにコストを払っています。

1. 月末の集計に毎回1時間以上かかっている

10人分の残業時間と有給残数を手で計算し、給与ソフトに転記する。この作業が毎月発生しているなら、年間で十数時間が消えています。

2. 誰かが必ず出し忘れる/締切に間に合わない

催促の連絡そのものが仕事になっています。人数が増えるほど、催促の件数は増えます。

3. 数式が壊れたことがある

行の挿入、セルのコピー、シートの複製で SUM の範囲がずれる。壊れても誰も気づかないまま給与計算に流れるのが Excel の怖いところです。

4. 「あとでまとめて入力」が常態化している

月末に1か月分を思い出して入力する運用は、記録としての信頼性がありません。これは手間の問題ではなく、後述する法令上の問題です。

5. 有給休暇の残数を別のシートで管理している

付与日が人によって違い、時間単位の取得もあり、繰り越しもある。有給の管理は Excel が最も破綻しやすい領域です。

6. ファイルが複数の場所にある

「最新版」がどれか分からない。共有フォルダとメール添付とデスクトップに別々の版がある。

7. 直行直帰や複数拠点の人がいる

出社しないと打刻できない仕組みは、そもそも実態を記録できていません。

Excel が法令上ひっかかりやすい点

手間の話とは別に、記録としての性質に弱点があります。

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、始業・終業時刻の確認は、使用者の現認か、タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間の記録といった客観的な記録によることを原則としています。自己申告制は例外扱いで、採用する場合は実態調査などの追加措置が求められます。

Excel に本人が後から入力する運用は、この整理でいうと自己申告制です。加えて Excel のセルは、いつ誰が入力したのか、あとから書き換えられていないかが分かりません。

未払い残業を争う場面で、事業者側の記録が自己申告のみだと、反証の材料として弱くなります。詳しくは 個人事業主・小規模事業者に勤怠管理の義務はある? を参照してください。

乗り換えの手順

移行そのものは、思われているより軽い作業です。人数が少ないうちほど簡単なので、増えてから考えるより今のほうが安く済みます

1. 締め日を確認して、切り替えのタイミングを決める

月の途中で切り替えないのが鉄則です。締め日の翌日から新しい仕組みに移すと、その月の給与計算が1つの仕組みで完結します。月中で切り替えると、その月だけ2か所から集めて合算する羽目になります。

2. 過去のExcelは「そのまま」保存する

移行にあたって過去データを新システムへ取り込む必要は、多くの場合ありません。労働基準法第109条の保存義務は、Excel ファイルを保管しておけば満たせます(5年間、当分の間は3年間)。

ファイルを月ごとにフォルダ分けし、バックアップを取っておけば十分です。過去データの移行を頑張ろうとすると、そこで移行プロジェクトが止まります。

3. 就業ルールを棚卸しする

移行時に必ず必要になる情報です。ここが曖昧なまま設定すると、あとで計算が合いません。

丸め処理には注意が必要です。 1日ごとの労働時間を15分単位などで切り捨てる処理は、原則として認められていません(1か月の合計時間について30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理は例外的に認められています)。Excel 時代に慣習で切り捨てていた場合、これは移行のタイミングで直すべき点です。

4. 1〜2名で先に試す

いきなり全員に配らず、自分ともう1人で1週間ほど打刻してみます。ここで出退勤の打刻タイミング、休憩の扱い、スマートフォンでの操作感を確認します。

5. 全員に配る

小規模なら説明会は不要です。打刻画面の URL と手順を一枚にまとめて渡せば足ります。スマートフォンのホーム画面に追加してもらうと、アプリのように1タップで開けるようになり、打刻忘れが減ります。

6. 最初の1か月は両方走らせない

不安から Excel も並行して続けたくなりますが、二重管理は最も事故が起きやすい状態です。1か月目は集計結果を目視で確認する、という形にとどめます。

乗り換え先を選ぶときの注意点

小規模事業者が見落としやすい点を挙げます。

見るところ なぜ重要か
人数で課金されるか 「1人あたり◯円」の料金体系だと、少人数でも最低利用人数の縛りで割高になることがある
初期費用の有無 小規模向けを謳いながら初期費用が数万円かかる製品がある
スマートフォンで打刻できるか 直行直帰や複数拠点があるなら必須
CSV/PDF で出せるか 給与ソフトへの連携と、監督署への提示の両方で必要になる
解約時にデータを取り出せるか 合わなかったときに記録を持ち出せないと、保存義務を果たせなくなる

最後の項目は軽視されがちですが、保存義務がある記録を預ける以上、出口の確認は入口と同じくらい重要です。

よくある質問

Excelでの勤怠管理は違法ですか?

Excel を使うこと自体が違法というわけではありません。問題になるのは「本人が後から自己申告で入力する」運用が、厚生労働省のガイドラインでいう例外的な方法にあたる点です。客観的な記録を基礎とした把握が原則とされています。

過去のExcelデータは新しいシステムに移行すべきですか?

多くの場合は不要です。労働基準法上の保存義務は、Excel ファイルをそのまま保管しておけば満たせます。過去データの移行に労力をかけるより、切り替え以降の運用を安定させることを優先してください。

何人くらいから乗り換えを検討すべきですか?

人数よりも、月末の集計にかかる時間で判断するほうが実態に合います。毎月1時間以上を集計に使っているなら、その時点で検討する価値があります。なお移行作業は人数が少ないほど簡単なので、増えるのを待つ理由はありません。

乗り換えのタイミングはいつがよいですか?

給与計算の締め日の翌日です。月の途中で切り替えると、その月だけ Excel と新システムの両方から集計する必要が生じます。

従業員が高齢でスマートフォンに不慣れです

打刻だけであれば、操作は出勤・退勤のボタンを押すだけです。一度ログインすればログイン状態が保たれるため(キンログの場合、30日以上使わなかったときのみ再ログイン)、ホーム画面に追加しておけばアイコンを押して打刻するだけになります。導入前に1〜2名で試して、実際の操作感を確認してください。

なお端末を持っていない従業員がいる場合は、その人専用の端末を用意する形になります。1台の共用端末から全員が打刻する運用(打刻専用モード)にキンログは対応していません。詳しくは 紙のタイムカードをやめる手順 を参照してください。