紙のタイムカードをやめる手順|捨てる前に確認すべきことと移行の進め方
紙のタイムカードは、労働時間の記録としては筋のよい方法です。本人の記憶ではなく打刻した事実が残るので、厚生労働省のガイドラインが原則とする「客観的な記録」にあたります。
問題は記録の質ではなく、その後の作業にあります。
タイムカードの弱点は「集計」と「打刻できない働き方」
1. 月末の集計が丸ごと手作業で残る
打刻はできても、そこから先——遅刻・早退の確認、残業時間の計算、深夜や休日の割増の区分、給与ソフトへの転記——は人がやることになります。従業員が10人いれば、毎月それなりの時間が消えます。しかもこの作業は人数に比例して増えるので、採用するたびに重くなります。
2. 電卓での集計は間違える
1分単位の時刻を足し引きする作業を、毎月手で繰り返せば必ずどこかで間違えます。厄介なのは、間違えても誰も気づかないまま給与計算に流れることです。
3. 出社しない働き方に対応できない
直行直帰、複数拠点、在宅。打刻機の前に立てない働き方があると、その人だけ別の方法(電話、メール、あとで手書き)になります。その瞬間、その人の記録だけ自己申告になり、客観性が崩れます。
4. カードと打刻機そのものの手間
- カードの補充と、月ごとの差し替え
- 打刻忘れ・二重打刻の修正(結局は手書きで直す)
- 打刻機の故障、インクリボンの交換
- カードの紛失
5. 保管場所が要る
後述しますが、タイムカードには保存義務があります。毎月10人分×数年分の紙が溜まっていきます。
やめる前に:過去のタイムカードは捨ててはいけない
ここが最も間違えやすい点です。
労働基準法第109条により、タイムカードは「労働関係に関する重要な書類」として保存義務の対象です。保存期間は5年間(経過措置により当分の間は3年間)。
システムに切り替えたからといって、過去の紙を処分してはいけません。
| やること | 内容 |
|---|---|
| 保管 | 年月ごとに箱・ファイルにまとめ、いつのものか分かる状態にする |
| 期間 | 最低3年(安全を見るなら5年) |
| 場所 | 水濡れ・紛失に注意。事務所移転時に捨てられがちなので注意 |
紙のまま保管するのが面倒なら、スキャンして PDF にしておく方法もあります。その場合も原本の扱いについては慎重に判断してください(電子帳簿保存法の対象書類とは別の話ですが、労基署の調査で提示を求められたときに応じられる状態であることが必要です)。
打刻機はいつ処分するか
移行が完全に終わってからです。具体的には、
- 新しい仕組みで1か月分の給与計算を最後まで通した
- その結果に不整合がなかった
この2つを満たすまでは、打刻機を残しておきます。リース契約であれば、解約のタイミングを確認してください(残期間の支払いが発生する契約があるので、切り替え日を契約の区切りに合わせられると無駄がありません)。
移行の手順
1. 締め日の翌日を切り替え日にする
月の途中で切り替えると、その月だけ「紙のカード」と「新システム」の両方から集計して合算する羽目になります。締め日の翌日から始めれば、その月の給与計算が1つの仕組みで完結します。
2. 就業ルールを書き出す
移行時に設定が必要になる項目です。長年の慣習で運用していると、ここが言語化されていないことがよくあります。
- 締め日と支給日
- 所定労働時間、休憩時間
- 残業の割増率(深夜・休日を含む)
- 有給の付与基準日(入社日基準か、一斉付与か)
- 時間の丸め方
最後の項目は注意が必要です。1日ごとの労働時間を15分単位などで切り捨てる処理は、原則として認められていません。 認められているのは、1か月の時間外労働の合計時間数について、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理です。
タイムカード時代に「15分未満は切り捨て」で運用していた場合、これは移行のタイミングで直すべき点です。過去分をどう扱うかも含めて、必要なら社会保険労務士に相談してください。
3. 1〜2名で1週間試す
いきなり全員に配らず、まず自分ともう1人で打刻してみます。ここで確認するのは、
- 出勤・退勤のボタンを押すタイミングが実際の働き方と合うか
- 休憩の入力が手間になっていないか
- 打刻を忘れたときにどう直すか(修正申請の流れ)
4. 全員に配る
小規模なら説明会は不要です。手順を一枚にまとめて配れば足ります。スマートフォンのホーム画面に追加してもらうと、アプリのように1タップで開けるので打刻忘れが減ります。
ここで前提を1つ確認してください。クラウド勤怠は「1人1端末」を前提にした作りのものが多いという点です。各自がログインし、その人の打刻として記録が残る仕組みなので、1台を全員で共有すると打刻のたびにログインし直すことになります。打刻機のように「その場所に行って押すだけ」にはなりません。
タイムカードからの乗り換えでは、ここが最初の分かれ道になります。全員が自分の端末を持っているか、持っていない人にどう対応するかを、製品を選ぶ前に確認しておいてください(後述)。
5. 最初の1か月は結果を目で確認する
不安から紙も並行して続けたくなりますが、二重管理は最も事故が起きやすい状態です。打刻は新システムだけにして、集計結果を目視で確認するにとどめます。
スマートフォンを持っていない従業員がいる場合
タイムカードをやめられない理由として最も多いのがこれです。ここは製品によって対応が分かれるので、正直に整理しておきます。
各自の端末があるなら、操作はタイムカードより簡単
一度ログインすれば、以後はログイン状態が保たれる製品がほとんどです(キンログの場合、30日以上使わなかったときだけ再ログインが必要)。ホーム画面に追加しておけば、アイコンを押して出勤ボタンを押すだけ。タイムカードを差し込むより手数は少なくなります。
不安なら、導入前に1〜2名で試せば実際の操作感が分かります。
端末を持っていない人がいる場合
現実的な選択肢は2つです。
1. その人専用の端末を1台用意する
安価なタブレットやパソコンを1台、本人専用として渡します。一度ログインしておけばログイン状態が続くので、以後は開いて押すだけになります。事務所に置きっぱなしでも構いません。
ただし他の人も触れる場所に置くと、本人以外が打刻できてしまう点には注意が必要です。人数分の端末が要るので、対象者が多いとコストも積み上がります。
2. 共用の1台を全員で使う(キオスク運用)
これは製品が対応しているかを必ず確認してください。打刻専用モードを持ち、名前を選んで暗証番号を入れるだけで打刻できる製品もあります。
一方、1人1端末を前提にした製品では、打刻のたびにログアウトとログインが必要になり、タイムカードの置き換えとしては現実的ではありません。キンログは現時点でこの形(共用端末での打刻専用モード)に対応していません。 全員が1台の共用端末から打刻する運用が必須であれば、キンログは適していません。無料トライアルの段階で確認してください。
Excel で管理している場合の乗り換えについては Excelの勤怠管理が限界になるサイン7つ を参照してください。
よくある質問
タイムカードでの勤怠管理は違法ですか?
違法ではありません。タイムカードは厚生労働省のガイドラインが原則とする「客観的な記録」にあたります。問題があるのは記録の方法ではなく、集計が手作業で残ることと、打刻機の前に立てない働き方に対応できないことです。
過去のタイムカードは捨ててよいですか?
捨ててはいけません。労働基準法第109条により、タイムカードは労働関係に関する重要な書類として5年間(当分の間は3年間)の保存義務があります。システムに切り替えた後も、過去の紙は保管し続ける必要があります。
打刻機はいつ処分すればよいですか?
新しい仕組みで1か月分の給与計算を最後まで通し、不整合がなかったことを確認してからです。リース契約の場合は解約時期も確認してください。残期間の支払いが発生する契約があります。
15分単位で切り捨てていましたが、続けてよいですか?
1日ごとの労働時間を15分単位などで切り捨てる処理は、原則として認められていません。認められているのは、1か月の時間外労働の合計について30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理です。移行のタイミングで見直すことをおすすめします。
従業員がスマートフォンを持っていません
その人専用の端末(安価なタブレット等)を1台用意する方法があります。一度ログインしておけばログイン状態が続くため、以後は開いて打刻ボタンを押すだけです。
なお、1台の共用端末から全員が打刻する運用(打刻専用モード)に対応しているかは製品によって異なります。 1人1端末を前提にした製品では、打刻のたびにログインし直すことになり現実的ではありません。キンログは現時点でこの形に対応していないため、共用端末での運用が必須の場合は他の製品を検討してください。
本記事は 2026年8月時点で公開されている法令・ガイドラインをもとに、一般的な情報として整理したものです。個別の事情に対する判断や最新の改正内容については、厚生労働省の公表資料をご確認いただくか、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。