勤怠管理システムの初期設定は何をするのか|小規模事業者が実際にやる作業
「システムを入れても、設定でつまずいて結局使わなくなりそう」——導入を先送りする理由として、料金と同じくらいよく挙がるものです。
社内にITに詳しい人がいない小規模事業者にとって、これは現実的な懸念です。ただ懸念の中身が「設定項目の多さ」だとすると、少しずれています。実際に導入が止まるのは、設定画面が難しかったからではなく、設定の前に決めておくべきことが決まっていなかったからであることがほとんどです。
この記事では、勤怠管理システムの初期設定で実際にやることを、製品を問わない形で整理します。比較はしません。切り替えるかどうかの判断そのものは 小規模企業に勤怠管理システムは必要か にまとめています。
初期設定で決めるのは、大きく5つだけ
製品によって画面の作りは違いますが、勤怠管理システムが動くために必要な情報はほぼ共通しています。
| # | 設定 | 何を決めるか |
|---|---|---|
| 1 | 従業員の登録 | 誰が打刻するか。氏名とログイン用の情報 |
| 2 | 所定労働時間 | 1日何時間を基準とするか。始業・終業の時刻 |
| 3 | 休日 | どの曜日を休日とするか。祝日を休日扱いにするか |
| 4 | 休憩 | 何時間働いたら何分の休憩を差し引くか |
| 5 | 有給休暇 | 付与日数と基準日。管理を任せるかどうか |
残業代の割増率や深夜時間帯は、法令で決まっているため設定不要な製品が多いです(深夜労働は22時〜翌5時、割増は25%以上)。ここを自分で入力させる製品は、逆に言えば自由度が高い分だけ初期設定が重くなります。
多いように見えますが、1と2以外は「よくある値」があらかじめ入っているのが普通です。次の章がこの記事の要点になります。
「設定項目がある」と「設定しないと動かない」は別
小規模事業者にとって重要なのは、設定項目の数ではありません。何も触らない状態で動くかどうかです。
例えば休日の設定を考えます。土日と祝日を休日とする会社は多いので、多くの製品は最初からそうなっています。土日休みの会社ならこの項目は開く必要すらありません。一方、水曜定休の飲食店なら、ここは必ず変更が要ります。
つまり初期設定の重さは、製品の機能数ではなく 自社が「よくある形」からどれだけ離れているか で決まります。
| 自社の状況 | 初期設定の重さ |
|---|---|
| 土日祝休み・全員が同じ時間帯で勤務 | ほぼ既定値のまま。従業員の登録だけ |
| 定休日が平日・営業時間が固定 | 休日設定を1回変えるだけ |
| シフト制・人によって勤務時間が違う | 従業員ごとの設定が要る。製品選びの時点で確認が必要 |
シフト制の職場は、ここで製品の向き不向きがはっきり分かれます。「全員同じ勤務時間」を前提にした製品だと、設定は軽い代わりにシフトを表現しきれません(アルバイト・パートの勤怠管理で押さえること)。
実際にかかる時間の目安
設定作業そのものは、多くの場合それほど時間がかかりません。時間を取るのは従業員の登録です。
| 作業 | 目安 |
|---|---|
| 事業者としての登録(アカウント作成) | 5分程度 |
| 会社の設定(勤務時間・休日・休憩) | 10〜20分。既定値のままでよければ0分 |
| 従業員の登録 | 1人あたり1〜2分。10人で15〜20分 |
| 従業員への説明と初回の打刻 | 全員に伝われば当日中 |
合計で半日はかからないのが普通です。ここが1週間かかったという場合、原因は次章のどれかにあたっている可能性が高いです。
導入が止まる原因は、たいてい設定画面の外にある
1. 就業のルールが決まっていない
これが最も多い原因です。
「所定労働時間は8時間ですか」と聞かれて即答できない、「休憩は何時から何分ですか」が人によって違う、「締め日は15日か月末か」が就業規則と実態でずれている——こうした状態でシステムを開くと、入力する値が決まらず、そこで手が止まります。
システムは就業ルールを整えてくれません。曖昧なまま入れても、曖昧なまま記録されるだけです。逆に言えば、ここが決まっていれば設定作業は単純な入力に過ぎません。
導入前に紙に書き出しておくとよいのは次の5つです。
- 1日の所定労働時間と、始業・終業の時刻
- 休日とする曜日と、祝日の扱い
- 休憩の時間と、どのタイミングで取るか
- 給与計算の締め日
- 有給休暇の付与基準日(入社日基準か、全員同じ日か)
2. 従業員にメールアドレスがない
見落とされやすい点です。従業員1人につきメールアドレスが必須の製品があります。
会社のメールアドレスを全員分持っている小規模事業者は多くありません。パート・アルバイトが中心の職場なら、なおさらです。個人のアドレスを提出してもらうという運用も、抵抗を感じる人がいれば必ず止まります。
契約前に、従業員の登録にメールアドレスが必須かどうかを確認してください。 必須でない製品なら、氏名とログイン情報だけで登録できます。
3. 打刻の方法が現場に合っていない
設定を終えてから気づくと痛いのがここです。打刻の方法は大きく3通りあります。
| 方法 | 向く職場 | 注意点 |
|---|---|---|
| 各自のスマートフォン | 全員が端末を持っている | 私物を業務に使うことへの同意が要る |
| パソコンのブラウザ | 一人ひとりに席とPCがある | 現場作業がある職場には向かない |
| 共用の端末(タブレット等) | 全員が同じ場所に出勤する | 対応していない製品がある |
「1台のタブレットを全員で回して打刻する」は、できる製品とできない製品がはっきり分かれます。 紙のタイムカードからの乗り換えでは、打刻機と同じ使い方を想像していることが多いため、事前の確認が要ります(紙のタイムカードをやめる手順)。
なお、その場所に来ないと打刻できないという性質は、タイムカードが持っていた重要な機能です。スマートフォン打刻に切り替えると、この性質は失われます。出勤の事実そのものを打刻で担保したい職場では、共用端末に対応した製品を選ぶ必要があります。
設定を後回しにしてよいもの、いけないもの
全部を最初に完璧にする必要はありません。
後からでよいもの
- 休憩の自動控除(実態が固まってから設定しても、それ以降の記録に適用されます)
- 部署や役職の細かい分け方(人数が少ないうちは不要)
- 深夜や休日の集計条件(既定値が法令に沿っている製品が多い)
最初に決めるべきもの
- 有給休暇の付与基準日。ここを後から変えると、付与済みの日数と取得日数の対応が崩れます。年5日の取得義務の管理にも直結します(年5日の有給休暇取得義務)
- 打刻の丸め方。日ごとの切り捨ては原則として認められていません。運用を始めてから直すと、その間の記録を精算する話になります(「15分単位で切り捨て」は違法)
キンログの場合
参考として、当社が提供しているキンログの初期設定を具体的に書きます。他社製品でも同じ観点で確認してみてください。
登録時に入力するのは4項目です。 事業者名、ログインID、パスワード、メールアドレス。それ以外の入力欄はありません。
登録した時点で、次のものが自動的に用意されます。
- 全権限を持つ「管理者」の役職
- 休暇の種別4つ(有給休暇・病欠・特別休暇・代休)
- 所定労働時間8時間、土日祝を休日、深夜は22時〜翌5時という初期値
このまま何も設定せずに打刻できます。 始業・終業の時刻だけは初期値がなく、未設定のあいだは遅刻の判定が行われません。設定すれば有効になります。土日祝休み・1日8時間の会社であれば、開く必要がある設定画面は実質ありません。
従業員の登録にメールアドレスは要りません。 必須なのは氏名・ログインID・パスワードの3つだけです。パート・アルバイトが中心の職場でも、アドレスを集めるところから始める必要はありません。
料金は10名まで月額1,000円(税抜)、11名目以降は1人あたり100円の加算です。初期費用と最低利用人数はありません。14日間の無料期間があり、クレジットカードの登録は不要です。
向いていない場合も書いておきます。 打刻は各自のスマートフォンかパソコンから行う形で、共用端末での打刻専用モードには対応していません。ICカードや生体認証にも対応していません。1台の端末を全員で共有する運用が前提の職場には適していません。シフト表の作成機能もありません。
よくある質問
設定に詳しい人がいなくても導入できますか?
設定画面の操作自体は、氏名や時刻を入力する程度の作業です。難しさがあるとすれば操作ではなく、入力する値(所定労働時間・休日・締め日)を自社で決めることです。就業のルールが定まっていれば、ITの知識は特に必要ありません。
従業員のメールアドレスは必ず必要ですか?
製品によります。必須の製品と、氏名とログイン情報だけで登録できる製品があります。全員分のアドレスを用意できない場合は、契約前の確認事項です。
初期設定を間違えたら、後から変えられますか?
多くの設定は変更できます。ただし有給休暇の付与基準日と、打刻の丸め方は、後から変えると過去の記録との整合が問題になります。この2つは最初に決めてください。
試用期間中に設定した内容は残りますか?
製品によりますが、無料期間からそのまま契約に移行する形であれば、通常は残ります。別の環境で試用させる製品の場合は、本番で設定をやり直すことになるため、事前に確認してください。
導入した月の途中から使い始めても大丈夫ですか?
問題ありません。ただし給与計算の締め日をまたぐと、その月だけ前半が紙・後半がシステムという二重管理になります。締め日の翌日から使い始めると、最初の1か月から集計がそのまま使えます。
本記事は 2026年8月時点の情報をもとに一般的な整理を行ったものです。各製品の料金・機能は変更されることがあるため、実際の内容は各社の公式サイトでご確認ください。法令の解釈や個別の事情については、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。